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鉄路の証言

アイコン 光陽出版社

2005年5月刊
アイコン 野崎梅子 著
  一九五二年、国鉄青梅線小作駅で貨車流出事故が発生、翌五三年一月、ひとりの気弱な青年が強盗予備容疑で逮捕された。想 像を絶する拷問による自白強要……。「青梅事件」十五年余にわたる裁判闘争はこうして始まった。真実を追求して生きた女性の成長と感動のドラマ! 日本国 民救援会中央本部会長山田善二郎氏推薦
アイコン 日本国民救援会中央本部会長山田善二郎氏推薦
鉄路の証言に寄せて
青梅事件は(国鉄当局が明確に)職員の過失事故として処理していた「貨車流し」貨車流出事故を日本共産党員らの鉄道妨害事件としてでっちあげた権力犯罪で ある。
政治問題に無関心な青年を逮捕,(封建時代を思わせるような凄惨な)拷問を加えてウソの自白を迫り、その自白をもとに野崎邦夫氏らを逮捕、起訴するという 謀略的手法がとられた類稀なる権力犯罪であった。
(一審の有罪判決後もウソの自白を維持し,町の片すみで小さく蹲っていた社会や政治に関心もない青年たちを説得してたたかいに立ちあがらせ、その青年たち を取りまとめながら十五年余りに及ぶ裁判闘争をたたかい勝利を勝ち取った野崎夫妻の労苦は語り尽くしえないものだったと思います。)本書は長期にわたる裁 判闘争のい記録であると同時に真実のためにひたむきに生きたひとりの女性の物語である。
(真実と正義のために生活の全てをかけた人間の物語であるこの書が、とりわけ日本の未来を担う若い人々の間に広められ,自由と民主主義を守るための糧とな ることを希望してやみません。)



 

アイコン 野崎梅子氏について
  1922年あきるの市(旧五日市町)に生まれる。
自らの人生そのものといえる「青梅事件」と、無実の罪に陥れられようとした夫野崎邦夫を中心とした被告たちの十五年余りにわたる裁判闘争そのもの、その歴 史と人生を描き残しておきたいという止むに止まれぬ欲求があった。野崎にとって「青梅事件」はライフワークとなった。八十歳をこえた野崎にとってその作業 (構成・2回にわたる推敲作業)はかなりハードなものであったに違いない。だが作品はあるみずみずしさとよりいっそうの深まりをともなって完成した。



アイコン 内容
勝利の保障は被告団の団結
自白被告は最大の犠牲者であり間違っても彼らを敵視してはならない
  (分裂)
1964年原水爆実験禁止をめぐる社共の対立がくすぶりはじめて、「中央青梅事件対策協議会」結成大会は自然流失の形でひらかれなかった。
しかし、無実のものに無罪判決を、という単純明快な目的を追求する青梅事件はなんの意見の相違もあるわけではなかったし、分裂の理由も原因も無かったの だったが、広範な盛り上がる大衆運動という基盤が築かれていなかった青梅事件では、中央団体の役員間の交渉の段階にあった中央対策協議会準備会は暗礁に乗 り上げてしまった。
あるとき両方の被告団が県評の事務局で鉢合わせをして、県評の事務局長が困ってしまって、結局両方の言い分を聞いた上で地域分担をして療法を受け入れた〜
〜その結果多くの人々が
「裁判闘争の分裂は前例が無い。権力と闘っている被告団が分裂していて裁判に敗れたら刑務所に入るのは被告だ。このことを肝に銘じ、1日も早くこんな不幸 な状態を終わらせて統一してほしい」

(高裁での敗北)
判決「(証拠がないということは)証拠によって把握することはまことに困難」であり「黙秘のカーテンの彼方に置かれた事柄というのほかなく」わからなくて 当たり前である・・・
判決「(各人の自白の矛盾は)各人各様の認識としてまことに妙味のあるところというべく」・・・
判決「拷問の事実はない」
この判決の内容と本質は多くの人々の怒りを燃え立たせ、その人々に被告たちの無実と権力の犯罪を確信させる力強い材料になるはずだった。
敗北のなかに勝利への大きな転機が潜んでいるはずであった。
勝利への転機をしっかり押さえ、運動を進めるならば必ず道は開かれるはずだった。
では、なぜ負けたのか
被告団が統一できたから必ず勝てると信じていた被告と家族は、裁判というものが決してそんな生やさしいものではないことを改めて真剣に考えなければならな かった。
青梅の被告,家族は、松川の被告や家族のようにたたかい、真実を訴え歩いただろうか?裁判のことは弁護士に任せ、運動のことはA氏にまかせ、たまの集会や 現地調査に顔を出す程度のことしかしなかったではないか。殆どの被告は妻子を養うことにかまけて事件とはかけ離れたところで生活していたといえないだろう か。
だが、もうあと最高裁しかなかった。そこで負けたら実刑組は刑務所に入らなければならないのだった。
しかも、裁判所は判決文の朗読はしたものの判決書はできておらず、判決書が弁護士に渡されたのは四ヶ月後だった。


(松川事件被告阿部市次氏から青梅事件被告への手紙)
「問題がこれほど山積みし、きびしい階級闘争が、しかも敵側からしかけられているのに、どうして楽観などできましょう。それは私たちがかつての敗北の道そ のままを辿っているに過ぎないことを知ってください。その遅れた最も弱い部分に仕掛けられた攻撃をどうやって粉砕するかを率直に真剣に考え、お互いに討論 していきたいと思っています。ともに同じたたかいですから私見を申し上げましょう」
1.統一戦線を強化するために何に重点を置くべきなのか?ということを考えてみてください。被告団・弁護団の統一はただひとつ,真実を明らかにすること以 外にないのではないでしょうか?

2.法廷内においても、従ってこの真実を明らかにすることであり、この事実をもってこそ獄外の陣列に参加し、強化することができると信じます。
3.なぜ自白させられたか、そのためにどれほどの重要な政治的損害を与え、そのことによる苦痛を味わわねばならないか?大胆にこの点を認め、誠実に国民に 訴えていく必要があるでしょう。

そこで具体的な問題が生じてきます。

(イ)第一に真実を明らかにするということはどんなことなのか?これは無数にあります。自白の成立過程、どういう誘導、脅迫、前後の関係から作り上げて いったのかの解明、無実の証拠、検察の証言に対する反駁準備等等。
これはけっして法廷戦術だけの問題からいっているのではありません。
松川のいままでのたたかいの経験からいえば「どうして自白したのだろうか」「あんなに自白調書があるのにどうして無実だというのだろう。やっているのでは ないか」等の大衆の批判に何をもって答えることできるでしょう。
中央公論の広津さんの方法を学んでください。これは大切なことです。

(ロ)通信活動は本当に大切です。労働組合の機関紙、その他の機関紙に積極的に訴え、調査団の派遣および公判傍聴をたたかいとることはどうしても大切で す(イ)(ロ)のことを実現するためには、被告団の結束はもちろんですが家族の結束も大切です。しかしなんといっても被告団の結束です。このあtめには 「まつかわ」形式の機関紙を発行し、全被告が参加し、そのなかにあらいざらいぶちまけていく方法をぜひ採用してください。

(松川事件被告阿部市次氏から青梅事件被告への手紙)
被告個々人は自分が不運だったと考えるのではなく、日本の労働者階級の尖兵として選ばれたのだという自覚,そして自分を救ってもらうことは、労働者全体が 救われるのだという自負をどうしたら持てるのかということです。
自分の殻にとじこもったら抜け道はありません。
拘置所の処遇はどんな具合ですか。全収容者の要求を調べて、その実現のため貴方がたがその先頭に立ってたたかいとるべきでしょう。

(青梅事件被告団の討議・確認)
1.われわれ(5人の否認組)がより団結するために、定期的にガテ(獄内手紙)により連絡を取り合って、どんな小さな問題でも話し合い苦楽をともにして助 け合い、長い公判闘争をたたかい抜こう。

2.来信を交換し合って家族が助けあえるようにしよう。

3.私たちには公判を妨げない範囲での自由が許されている。
ところが事実において不自由な点が多い。どんな小さな要求でもどんどん出してたたかいとり、長い拘留生活に耐えていこう。

4.勝負のカギは一人でも多くの国民に真実を知らせることだ。ひとり1ヶ月に五十人以上に手紙を書こう。

この申し合わせと前後して被告段は所長面接をおこなって処遇改善の要求を出し、次の事項をかちとった。
私物購入日と申込み方法
私本の削除は理由を添える
房内のタンツボとついたて
運動用具の利用
臭い飯、ガンジ飯(半煮え)をなくし、その場合は必ず交換する。5等飯は少ないので考慮する。
書信の削除を無断でしない。その日のうちに検閲して出す。
今後どんな問題も所長と話し合って解決していく。






 
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